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塀際
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へいぎは
塀際にゐた岡田は、宇津木の
最期を見届けるや
否や、塀に沿うて
東照宮の
境内へ抜ける非常口に駆け附けた。そして
錠前を
文鎮で
開けて、こつそり大塩の屋敷を出た。
見ると丁度店の左の方の庭の外の
塀際で、妹と傳次郎が掴み合つてゐるぢやありませんか。
放して
退ると、
別に
塀際に、
犇々と
材木の
筋が
立つて
並ぶ
中に、
朧々とものこそあれ、
學士は
自分の
影だらうと
思つたが、
月は
無し、
且つ
我が
足は
地に
釘づけになつてるのにも
係らず、
影法師は
塀際に添ひて人の
形動くと見えしが、なほ暗くて
了然ならず。
「そして、
塀際に
居ますんですね……
踞んで、」