どろ)” の例文
顔も、髪も、どろまみれに、真白まっしろな手を袖口から、ひしと合せて、おがんで縋って、起きようとする、腕を払って、男が足を上げて一つ蹴た。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此方こちらで人形を造ってはどうだかというと、どろや、絵具や、型を取り寄せるのに面倒だから、今迄やって見たことはないが、家で蝋燭ろうそくを造る蝋があるから
蝋人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
西、両国りょうごく、東、小柳こやなぎと呼ぶ呼出しやっこから行司ぎょうじまでを皆一人で勤め、それから西東の相撲の手を代り代りに使い分け、はて真裸体まっぱだかのままでズドンとどろの上にころがる。
伝通院 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その日、樵夫の子供は、かたばかりのお葬式とむらいをして、父親を、森の小高いところのどろを掘つて埋めました。
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
よくもこのあたしにどろを塗ったわね……ふん、葉ちゃんが来たからって、何も大周章あわてで飛のかなくてもいいじゃないの、そんなにこのあたしが嫌いなら、何故嫌いのようにしないのさ
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
この父親を埋めたどろのちかくに棲んでをりました一匹のこほろぎが、たいへん樵夫の子供に同情をして、きつと私が仇討あだうちをしてあげますからと親切になぐさめてくれたのです。
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
悪い野牛は、後肢あとあしどろを蹴りながら、大喜びで逃げてしまひました。
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)