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器械的
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きかいてき
夜、二畳の
炬燵に入って、
架上の一冊を
抽いたら、「
多情多恨」であった。
器械的に
頁を
翻して居ると、ついつり込まれて読み入った。
座敷へ
來て
見ると、
御米は
眉を
寄せて、
右の
手で
自分の
肩を
抑えながら、
胸迄蒲團の
外へ
乘り
出してゐた。
宗助は
殆んど
器械的に、
同じ
所へ
手を
出した。
御米は
卒然何とも
知れない
恐怖の
念に
襲はれた
如くに
立ち
上がつたが、
殆んど
器械的に、
戸棚から
夜具蒲團を
取り
出して、
夫の
云ひ
付け
通り
床を
延べ
始めた。