喧嘩腰けんかごし)” の例文
大きな眼には意地の悪そうな、とげとげしい色があり、サンド・ペーパーでもこするようなしゃがれ声で、なにを云うにも喧嘩腰けんかごしであった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
主人はもう喧嘩腰けんかごしなのです。こうなって来ますと、私は、もしや河野が覗き眼鏡の一件を持出しはしないかと、もう気が気ではありません。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
母は三言目には喧嘩腰けんかごし、妻は罵倒ばとうされてあおくなって小さくなる。女でもこれほどちがうものかと怪しまれる位。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
その大兵たいひょう露助ろすけは、小さい日本兵の尖った喧嘩腰けんかごしの命令に、唯々諾々いいだくだくと、むしろニコニコしながら、背後から追いたてられて、便所などに、悠々ゆうゆうと大股にったりしていた。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
親方の態度は、彼に対するよりも隣人に対して遥かに圧制的であり、喧嘩腰けんかごしだった。
遺産 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
「うむ、火事知らずか、何を、」と喧嘩腰けんかごしに力を入れて、もう一息押出しながら
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
喧嘩腰けんかごしはよして、まずミミ族の招待会を開いて、酒でものませてやったらどうだ
宇宙戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
話すなら穏かに話したらどうか、本家に対してこいさんが喧嘩腰けんかごしになられたら、私等が迷惑する、私等はそんなつもりでこいさんの味方をしたのではないのだから、———と、こうも云い
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「ふん」と牛丸も喧嘩腰けんかごしになり、「多四郎の奴が来ないうちは岩さんで大騒ぎをしたくせに!」グルリと森の方へ向きを変えたが、「やあもうそこまでやって来た。……妙な人がいて来るよ……」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
まつたくこゝらでは、復興局の人をみると喧嘩腰けんかごしつてかゝるのが随分ありますから、一々相手になつてゐるのも面倒だと思つて、わざと夜ふけに見廻つてあるくと云ふことも無いとは云へません。
赤い杭 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
ほとんどチベット婦人の本性を現わして喧嘩腰けんかごしになりますと
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
先ずさような喧嘩腰けんかごしでないものを私は望むのである。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
「そう喧嘩腰けんかごしで出られては困る、君に覚えがなければ、何と言われても腹の立つことはないではないか。拙者も君の言うたことにつき合うて用もないこの座敷へわざわざ出て来たのだから、君も拙者の問いに答えてもらいたい、相見互あいみたがいじゃ」
大きな眼には意地の悪そうな、とげとげしい色があり、サンド・ペーパーでもこするようなしゃがれ声で、なにを云うにも喧嘩腰けんかごしであった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
という訳で、近頃ではお互に口を利けば、すぐにもう喧嘩腰けんかごしになり、そうでなければ、何時間でも黙ってにらみ合っているという有様であった。今日もまたそれである。
夢遊病者の死 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
まるで喧嘩腰けんかごしの応待だった。
内蔵允留守 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)