同一ひとつ)” の例文
田もかくれぬ畑もかくれぬ、日毎に眺むる彼の森も空と同一ひとつの色に成りぬ、あゝ師の君はと是れや抑々そもそもまよひなりけり。
雪の日 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
東京とうきやういたところにいづれも一二いちに勸工場くわんこうばあり、みな入口いりぐち出口でぐちことにす、ひと牛込うしごめ勸工場くわんこうば出口でぐち入口いりぐち同一ひとつなり、「だから不思議ふしぎさ。」といてればつまらぬこと。
神楽坂七不思議 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
こういう男女の落ち行く先は、古来往来ここんおうらい同一ひとつである。夫婦になれなければ心中である。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
夫はもっともの次第です目「着物は何の様なのをて居ました倉「昨日捕えられた時と同一ひとつの着物でした目「夫にしても彼の様子か顔附に何か変ッた所は有りませんでしたか倉「少しも有りませんでした」
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
かくて六箇むつの車輪はあたかも同一ひとつの軸にありて転ずるごとく、両々相並びて福岡ふくおかというに着けり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
理窟を言えば同一おんなじで、垣根にあるだけの雪ならば、無理に推せばくけれど、ずッとむこうの畠から一面に降りつづいて、その力が同一ひとつになって、表からおすのだもの。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
じゃがお前、東京と代が替って、こちとらはまるで死んだ江戸のお位牌いはいの姿じゃわ、羅宇らお屋の方はまだけたのが出来たけれど、もう貍穴まみあなの狸、梅暮里のどじょうなどと同一ひとつじゃて。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
同一ひとつ家に我儘わがままを言合って一所に育って、それで惚れなければどうかしているんです。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
馬鹿野郎! おいら弟子はいくらでもある、が小児こどもの内から手許に置いて、あめン棒までねぶらせて、妙と同一ひとつ内で育てたのは、きさまばかりだ。その子分が、道学者に冷かされるような事を、なぜするよ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あんたのうちも、私家わしとこも、同一ひとつに水びたり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)