可愛いとし)” の例文
しかも世を捨てし其人は、命を懸けて己れを戀ひし瀧口時頼。世を捨てさせし其人は、可愛いとしとは思ひながらも世の關守せきもりに隔てられて無情つれなしと見せたる己れ横笛ならんとは。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
が、あれは雪に霊があって、小児を可愛いとしがって、連れて帰ったのであろうも知れない。
雪霊記事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いたく我が娘は叔母の娘に勝りたれば、叔母も日頃は養ひ娘の賢き可愛いとしさと、うみむすめ自然おのづからなる可愛いとしさとに孰れ優り劣り無く育てけるが、今年は二人ともに十六になりぬ、髪の艶、肌の光り
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「父上、それでは申しますが、この山吹はそれがし可愛いとし許婚いいなずけでござりますぞ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そつとさし置たち出しが又立もどり熟眠うまひせし其顏熟々つく/″\打ながめ偶々たま/\此世で親と子に成しえにしも斯ばかりうすちぎりぞ情なし然どなんぢを抱へては親子がつひゑ死に外にせんすべなきまゝに可愛いとし我が子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
大あて違ひ、大失策しくじり、帰れ去ねいと太一が小言。戸外で立聞く、身の辛さ。お娘が気の毒、可愛いとしさに、怒られるのは承知の上で、おれが出過ぎを白状する。な太一、新平の娘といはせまいとの心配。
移民学園 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
が、あれはゆきれいがあつて、小兒こども可愛いとしがつて、れてかへつたのであらうもれない。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)