取散とりちら)” の例文
それほどの珍客があると云うに平常いつもの如く書生ばかりで手伝の人も来ていず、座敷も取散とりちらした儘で掃除する様子もありません。
經て長庵の家主の手に渡すに何事やらんと驚きつゝ家主は長庵方へ到りけるかくあらんとかねて覺悟の長庵は鉢卷はちまきして藥土瓶くすりどびんなぞ取散とりちら大夜具おほやぐ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
せめ盗坊どろぼう所為しわざにでも見せ掛け何か品物を盗んで置くとか此室を取散とりちらして置くとかそれくらいの事はそうなもの
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
空は同一おなじほど長方形に屋根を抜いてあるので、雨も雪も降込ふりこむし、水がたまつてれて居るのに、以前女髪結おんなかみゆいが住んで居て、取散とりちらかした元結もっといつたといふ
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
身は戸の口にたちまゝなるもまなこ室中しつじゅう馳廻はせまわれり、今まで絵入の雑誌などにて人殺ひとごろしの場所を写したる図などは見し事ありいずれにも其辺そのあたり取散とりちらしたる景色見えしに
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
そうさ別に此室を取散とりちらすとか云う様な疑いを
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)