匪賊ひぞく)” の例文
そこで老翁が語り出すのを聞けば、この地方の青州せいしゅうの県軍でも手を焼いている匪賊ひぞくの一団がこれから奥の桃花山に住んでいる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
百人あまりの匪賊ひぞくでした。風のようにおそってきました。十人ばかりの者が、銃や剣をさしつけて、馬車をとりまきました。
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
国境でロシア人に幾日モスコーを発つか、五月十一日に発ちます、という問答が満州の匪賊ひぞくに通謀されていたのでした。
お蝶夫人 (新字新仮名) / 三浦環(著)
もっともこんな目に遭ったのは我々ばかりでなく、白耳義公使が北京郊外の明の十三陵見物に行って、匪賊ひぞくのために素裸にされた事件もこの当時であった。
匪賊ひぞくが出て、この橋脚に近づき、赤外線をさえぎると、直ちに光電管の電気が停るから、電鈴を圧えていた力は抜け、電鈴はけたたましく匪賊襲来しゅうらいを鳴り告げる。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼は生若なまわかい伍長が直立して敬礼するのに対して、馬鹿野郎と呶鳴った。軍人より匪賊ひぞくというタイプだった。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
物騒千万な世の中で、落人おちうどとなったが最後、誰に殺されても文句がないのであるし、また所在匪賊ひぞくのような連中がいて、戦争があるとすぐ落人狩をやり出すのである。
山崎合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
匪賊ひぞくが処在に蜂起してこれを征討する列強はために奔命につかるる。即ち沢山たくさんの金のみを要してなんらの得るところがない。いな、得る処なきのみならず、かえって益々ますます損をする。
三たび東方の平和を論ず (新字新仮名) / 大隈重信(著)
なるほど夜行列車の危険は匪賊ひぞくばかりとは限らないのだと知って、皆で苦笑した。
ツンドラへの旅 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
いちばん大きなのは、暗くなって、鳥の目が見えなくなったとき、海鳥のアジサシのひなを、大きなくぎぬきのようなはさみでつまんで、せっせとじぶんのあなに運んでいく、匪賊ひぞくのようなカニもいた。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
残された手下どもは、変だと知って、劉老人を縛りあげ、これを曳いて、翌朝、桃花山の匪賊ひぞくの木戸へ帰ってきた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのことを知っていますので、匪賊ひぞく達も、玄王をそまつにはあつかいませんでした。玄王のきずはなおりました、けれども、次には病気で寝つきました。
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「そうさ。空の匪賊ひぞくみたいなものだ」
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
黄泥岡こうでいこうから、夜昼なしに、都へ舞い戻ったりょう家の執事のしゃは、下手人は、楊志とれ合いで、道に待ち伏せしていた七人の匪賊ひぞくであると、主君の前に讒訴ざんそした。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから二年たって、玄王のところへ、非常に強い匪賊ひぞくおそってきました。激しい戦がありました。
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
領主の統治が行亘ゆきわたらず、茨組いばらぐみのような暴徒や、匪賊ひぞくのような野武士の襲来に備えて、何の警察力もない民は、それが僻地の村落であればあるほど、彼ら自身が武力を持たなければ
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どんなに怖いか——これは彼の生れた法典村が一年おきに匪賊ひぞくに襲われて、その後は一箇の鶏の卵も、一升の小豆あずきもなくなってしまう惨状なので、よく知りつくしていたし、また
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「今昔物語」などには、“合戦ヲモツテ、業トナス——”人種のようには書いてあるが、匪賊ひぞくのように、それのみが目的ではない。武門といえど、荘園や開墾や、土の経済の上に、立っていた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
汝南には前から劉辟りゅうへき龔都きょうとという二匪賊ひぞくがいた。もと黄巾の残党である。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
墻といっても匪賊ひぞくに備えるためこの辺では、すべてといってよい程、土民の家でも、土の塀か、石で組上げた物でできていたが、劉家だけは、泰平の頃に建てた旧家の慣わしで、高い樹木と灌木に
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)