加之のみならず)” の例文
加之のみならず、其麽時は、何処から持つてくるものやら、鶏とか、雉子とか、鴨とか、珍らしい物を持つて来て、手づから料理して父と一緒に飲む。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
加之のみならず、スコット氏の見聞によれば、人々は非常に思いやりが深く親切で、態々わざわざ火事のあった場所へ買物に行く結果、焼け出された所で大した苦にはならぬ。
加之のみならず、そこには昔ながらの建物に相応ふさわしい藤棚があり、庭があり、泉水がありました。全体として、狭いながらも、それはチャンと整った一区画を示しているものでした。
「奈良」に遊びて (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
加之のみならず最も有効な薬は、これを多量に用ふれば最も恐ろしい毒であることは周知のことである。
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
加之のみならずこう知名の学者が名前をつらねている中に姓名だけでも入籍させるのは、今までこんな事に出合った事のない主人にとっては無上の光栄であるから返事の勢のあるのも無理はない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
加之のみならず、渠は恁麽こんな釧路の樣な狹い所では、外交は上島と自分と二人で十分だと考へて居た。時々何も材料が無かつたと云つて、遠い所は𢌞らずに來る癖に。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
加之のみならず、このようにすれば、日本人と接触する外国人の態度や行儀が、条約港に於てより良好な印象を残すに至ったであろう。司教は訓練された人であった。
中々錯雑なものなり、加之のみならず個人の一行一為、各其る所を異にし、其及ぼす所を同じうせず、人を殺すは一なれども、毒を盛るはやいばを加ふると等しからず、故意なるは不慮の出来事と云ふを得ず
人生 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
加之のみならず、渠は恁麽こんな釧路の様な狭い所では、外交は上島と自分と二人で充分だと考へて居た。時々何も材料が無かつたと云つて、遠い所は廻らずに来る癖に。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
加之のみならず、日本の店にある品は、僅かな例外——支那及び朝鮮から来たもの——を除いては、国産品であるが、米国にある品は、必ず欧洲かアジアから来たもので
加之のみならず、今日は妹の靜子と二人で町に出て來たので、其妹は加藤の宅で兄を待合して一緒に歸ることにしてある。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
加之のみならず、今日は妹の静子と二人で町に出て来たので、其妹は加藤のうちで兄を待合して一緒に帰ることにしてある。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
加之のみならず何事にも器用な人で、割烹れうりの心得もあれば、植木いじりも好き、義太夫と接木つぎき巧者じやうずで、或時は白井様の子供衆のために、大奉だいほう八枚張の大紙鳶おほたこを拵へた事もあつた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
加之のみならず年老としとつた両親と、若い妻と、妹と、生れた許りの女児をんなのこと、それに渠を合せて六人の家族は、いかに生活費のかからぬ片田舎とは言へ、又、倹約家しまりやの母がいかにしまつてみても
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
自分から進んで学校に入れて貰つたに拘らず、私はつい学科に興味を有てなかつた。加之のみならず時には昼休に家へ帰つた儘、人知れず裏の物置に隠れてゐて、午後の課業を休む事さへあつた。
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
加之のみならず、此一面の明鏡は又、黄金の色のいと鮮かな一ひらの小扇さへ載せて居る。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
たゞに話巧者で愛想が好い許りでなく、葬式に行けば青や赤や金の紙で花を拵へて呉れるし、婚禮の時は村の人の誰も知らぬ「高砂」の謠をやる、加之のみならず何事にも器用な人で、割烹の心得もあれば
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)