前額ひたい)” の例文
見れば秀子は左の前額ひたいに少しばかり怪我をして血がにじんで居る、仆れる拍子に何所かで打ったのであろう、余は手巾を取り出し、其の血を拭いて遣ろうとするに
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
前額ひたいと胸とを鋭い岩角に打ちつけて、それが致命傷らしかった。明らかに溺死ではなかった。
勝敗 (新字新仮名) / 渡辺温(著)
他の多くの神や諸王は一頭を前額ひたいいただくとした(バッジ『埃及諸神譜ゼ・ゴッズ・オヴ・ゼ・エジプチアンス』二、三七七頁)。
根下ねさがりの丸髷に大きな珊瑚珠さんごじゅかんざしを挿し、鼈甲べっこうくしをさしていた、ことさらに私の眼についているのは、大きくとった前髪のあまりを、ふっさりきって二つにわけ、前額ひたいの方へさげている。
主人の佐兵衛はよく禿げた前額ひたいを叩くように、薄暗い奥から飛んで出ました。
良人おっと沼南と同伴でない時はイツデモ小間使こまづかいをおともにつれていたが、その頃流行した前髪まえがみを切って前額ひたいらした束髪そくはつで、嬌態しなを作って桃色の小さいハンケチをり揮り香水のにおいを四辺あたりくんじていた。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
彼れ例の空箱にて之をけ「して藻西の犬とはの様な犬だ」と老女に問う女「はい前額ひたいに少し白い毛が有るばかりで其外は真黒な番犬ばんいぬですよ、名前はプラトと云ましてね、 ...
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
是も言うて成らぬ事を云ったと思ったのか直ちに余の胸に前額ひたいを隠した。
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)