前表ぜんぴょう)” の例文
妻は何か大きな災難の来る前表ぜんぴょうのように考えたようだったが、それから三月ばかりで社長秘書兼務に栄転した時
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
隣の婆アさんが箸は木で拵えたものだから、折れることも有ろうと申して、祝し直してくれましたが、矢張やっぱりそれが前表ぜんぴょうで虫が知らせたのでございましょう
あさいのお家の織田どのにほろぼされる前表ぜんぴょうだったのだと申すのでござります。
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
下人祝してお前は長崎丸山の出島屋万六とて女郎屋の一番名高いくつわ、その轡へ新しい上赤貝の女郎が思い付いて招かぬに独り食い付くと申す前表ぜんぴょうと悦ばす所あるはこれに拠って作ったのだ。
くの通りの旱魃かんばつ、市内はもとより近郷きんごう隣国りんごくただ炎の中にもだえまする時、希有けう大魚たいぎょおどりましたは、甘露かんろ法雨ほううやがて、禽獣きんじゅう草木そうもくに到るまでも、雨に蘇生よみがえりまする前表ぜんぴょうかとも存じまする。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「招かずして、王平がくだってきたのは、われ漢水を取る前表ぜんぴょうである」
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二箇ふたつ揃っていたものをいかに過失とは云いながら一箇ひとつにしてしまったが、ああ情無いことをしたものだ、もしやこれが前表ぜんぴょうとなって二人が離ればなれになるような悲しい目を見るのではあるまいかと
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)