刷物すりもの)” の例文
つまり山浦内蔵助作刀頒布会はんぷかいなのである。口数ふりかずを百ふりとして、酒井家は勿論、旗本仲間、各藩の有志に、刷物すりものを廻して、会員をつのろう。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここでは主膳が大将気取りで、座中には酒肴を置いて、主膳は真中に、いま刷物すりものの競馬の番組を見ていました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それを机の抽斗ひきだしから取出した半紙でクルクルと包みまして、同じ抽出ひきだしから出した屍体検案書の刷物すりものや二三の文房具と一緒に先刻の屍体台帳の横に置並べましたが
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
○この頃「古池旧蹟芭蕉神社創立十年祭記念物奉納並大日本俳家人名録発行緒言」と題する刷物すりものの内に賛成員補助員などの名目ありて我名もその補助員の中に記されたり。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
その年の秋、日光から足尾あしおへかけて、三泊の修学旅行があった。「午前六時三十分上野停車場前集合、同五十分発車……」こう云う箇条が、学校から渡す謄写版とうしゃばん刷物すりものに書いてある。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
己にゃあその隅に、お前のうしろに、フリント親分が見えてるんだ。刷物すりものみてえに、はっきりと見えてるんだ。もし酒精中毒を起すとなると、己ぁあれえ渡世をして来た男だ、大騒ぎを起すぜ。
翁はまた此様なものを作ったと云って見せる。場内の農家にわか刷物すりものである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
といつて、勧誘員は保険率の刷物すりものを取り出して、そつと畳の上に置いた。
といって、懐から一枚の刷物すりものを出し、それをひょろ松に渡しながら
それはいま読んだ「恐れなが売弘うりひろめの為の口上、家伝いゑもち、別製ねりやうくん」と書いた、まぎれもなく今の将軍家を誹謗ひぼうした刷物すりものです。悪い奴に、悪い物を拾われました。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
町はずれの隧道とんねるを、常陸ひたちから入って磐城いわきに出た。大波小波鞺々どうどうと打寄する淋しい浜街道はまかいどうを少し往って、唯有とあ茶店さてんで車を下りた。奈古曾なこそ石碑せきひ刷物すりもの、松や貝の化石、画はがきなど売って居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)