出語でがたり)” の例文
そのまま長唄ながうたにしての独吟あり廻つて河庄茶屋場かわしょうちゃやばとなる二幕目ふたまくめ竹本連中たけもとれんじゅう出語でがたりにてわれら聞馴れし炬燵こたつ引返ひきかえして天満橋太兵衛殺てんまばしたへえごろしとなる。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
不可いけない、不可い、なお目立つ。貴女、失礼ですが、裾を端折はしょって、そう、不可いかんな。長襦袢ながじゅばん突丈ついたけじゃ、やっぱり清元の出語でがたりがありそうだ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
次は振附の問題であつた。それは忠臣蔵三段目に清元の出語でがたりを出すから、是非入用なのである。さいはひ柏軒の病家に藤間しげと云ふ踊の師匠があつたので、それを頼んだ。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
其奴そいつが詰らない出語でがたりをしやアがって、伊之助さんはお内儀さんを持って、赤さんまで出来たなぞと喋ったもんですから、花魁が貴方を怨み出し、夫婦仲好く楽しんで居るから
清長の好んで描く所は浄瑠璃所作事じょうるりしょさごとの図にして役者のうしろ出語でがたり連中れんじゅうを合せ描きたり。この時代の出語を見るに富本常磐津とみもとときわず太夫たゆうにはかみしもを着けず荒きしまの羽織を着たるものあり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
余は眺むるうちに図中おのずか出語でがたりの三味線と足拍子あしびょうしひびきをさへ聞くが如き心地ここちせり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
町中まちじゅうの堀割に沿うて夏の夕を歩む時、自分は黙阿弥もくあみ翁の書いた『島鵆月白浪しまちどりつきのしらなみ』に雁金かりがねに結びし蚊帳もきのふけふ——と清元きよもと出語でがたりがある妾宅の場を見るような三味線的情調に酔う事がしばしばある。
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)