出場でば)” の例文
しばらくするとドカドカと二、三人の人が、入りのすくない土間どまの、私のすぐ後へ来た様子だったが、その折は貞奴の出場でばになっていた。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
前後の事情から考えて見てもこの疑問の渡欧費は全部が本屋から調達したのでなくとも、後暗うしろぐらい金の出場でばが別にあったとは思われない。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
少し以前まえから物の蔭にたたずみ、あさましくすさまじい姉妹二人の、恋の争いを見聞きしていたが、出場でばを失って出かねていたところの、大蔵ヶ谷右衛門がこの時出て
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
夜明よあけがたまでんな風で遊びあか習慣ならひだが、晶子が室内に濛濛もうもうとして出場でばを失つて居る煙草たばこの煙に頭痛を感じると云ふので十二時少し過ぎに帰つて来た。(六月十七日)
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
とかく、君の悪い癖で、出場でばというと、すぐ自分を売り込みたがるが、短気、お喋舌しゃべり悪酒わるざけ、暴力好き、一つも取りはありはしない。ましてこんどの行くさきは北京ほっけい第一の城市まち
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
猫背の痩せて尖つた肩つきは坐つた人達の間を分けて行く時、弱々しげではあつたが、舞台で出場でばを心得てゐる老優に見られるやうな落ちつきと確信があつた。次には堂本が立つた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
と、いきなり相手のセリフを食ってしまったので、石田氏の出場でばがなくなった。
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
いよいよ自分の出場でばが来たと思ったんだ。
「こいつが来たので、出場でばを失ったのだ」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
今日の出場でばはただの出入りじゃねえ。
天狗外伝 斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
平野をどり舞人まひびとと思はるる黒紋附に白袴しろばかま穿きたるいでたちのボオイ達、こちたく塗れるおしろいの顔、出場でば待遠まちどほげに此方彼方こなたかなたするが、目に変化へんげのものの心地もせられて可笑をかしくさふらひき。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
今日の出場でばはただの出入りじゃねえ。
斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)