冬分ふゆぶん)” の例文
夏は、まあええが、冬分ふゆぶんは死ぬ思いじゃったなあ。遠賀川おんががわの洲の岸に、水棹みさおを立てて、それに、舟を綱でもやう。寒風が吹きさらす。雪が降る。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
関西ではこれを汁団子、または単に汁ワカシとも謂って、冬分ふゆぶん三食の一度はこれを食わぬ農家も稀であった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ところが何しろ防腐剤なぞいうものが無い頃なので、冬分ふゆぶんではあったが、腐るのがだんだん早くなって、一つの絵の写し初めと写し終りとは丸で姿が違うようになった。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
冬分ふゆぶん往々わう/\敦賀つるがからふねが、其處そこ金石かないはながら、端舟はしけ便べんがないために、五日いつか七日なぬかたゞよひつゝ、はて佐渡さどしま吹放ふきはなたれたり、思切おもひきつて、もとの敦賀つるが逆戻ぎやくもどりすることさへあつた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今ではインド流の長方形の船で人を渡して居るけれど、これは冬分ふゆぶんだけこういう船で渡すことが出来ますので、夏になればこんな大きな船でもってとてもむこう岸に渡すことが出来ない。それで
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)