入道雲にゅうどうぐも)” の例文
……と言ふとたちまち、天に可恐おそろしき入道雲にゅうどうぐもき、地に水論すいろん修羅しゅらちまたの流れたやうに聞えるけれど、決して、そんな、物騒ぶっそう沙汰さたではない。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ながい梅雨が終り、遠い空にいかつい入道雲にゅうどうぐもが湧いて、日中の強烈な夏の重い光が、夜ふけまで部屋の空気を熱している暑い日々が来ていた。
軍国歌謡集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
思いもつかぬことをされると、ハッキリ用意ができていないために、急に『不安』が入道雲にゅうどうぐものように発達して、正体まであらわしてしまうのですね。
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あたまうえで、ひかりが、きらきらとしたが、あちらのあおそらには、しろ入道雲にゅうどうぐもが、もくもくとていました。
白壁のうち (新字新仮名) / 小川未明(著)
ロケーションは、このへんがもうし分なしですね。あのそぎたったような崖、たおれた大榕樹だいようじゅ、うしろの入道雲にゅうどうぐもの群。そうだ、あの丘の上へ恐竜を
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
助手じょしゅ小田おださんが、かがみあたらしい木箱きばこにおさめて、北国ほっこく旅立たびだったのは、なつもなかばすぎたのことで、烏帽子岳えぼしだけのいただきから、奇怪きかい姿すがたをした入道雲にゅうどうぐもが、平野へいやおろしながら、うみほうへと
うずめられた鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)