優渥ゆうあく)” の例文
迎えに出た董一家の者にむかって、帝の優渥ゆうあくなる恩命を伝え、それから静かに病室へはいって、董承の容体をつまびらかに診察した。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それでこの高大な優渥ゆうあくな思し召しに対しては充分に技芸員たるものは気を附けねばならぬことと思う。
かつて高山樗牛ちょぎゅう菅公論かんこうろんを著わして、道真が彼を登用して藤原氏の専横せんおうを抑えようとし給うた宇多上皇うだじょうこう優渥ゆうあくな寄託にそむいたのを批難し、菅公の如きは意気地いくじなしの泣きみそ詩人で
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
予は性来山が好きである、そうして山の最も好いのは秋であるから、今度の休みは誠に優渥ゆうあくなる天恩と感謝してよい。この一篇の目的はかくの如くにして得た山居の消息を伝えんとするに在る。
鹿山庵居 (新字新仮名) / 鈴木大拙(著)
正成もこの優渥ゆうあくなご態度には、身のしびれを感じたにちがいあるまい。彼の背はこれ以上には伏せられぬほど低まった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は寸功すんこうを顧みて拝辞した。が、かさねて優渥ゆうあくなお沙汰を賜うて、従五位下、左近衛少将に叙任じょにんせられた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……何かは知らぬが、きいてやろうという優渥ゆうあくなお気もちは、充分、御簾ぎょれんのうちからもうかがわれた。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さいとし万里小路惟房卿までのこうじこれふさきょうをお使いとして、微臣信長に、密勅を賜わったが、今また、信長上洛じょうらくの催しを叡聞えいぶんあらせられて、ひそかに、優渥ゆうあくなる御綸旨ごりんじと、金襴きんらん戦袍せんぽうとを賜わった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後白河法皇の優渥ゆうあく思召おぼしめしから、院旨いんじを以て、叙位じょい官職を賜わったものと聞かされた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
成都からは即刻、尚書僕射しょうしょぼしゃ李福りふくが下っていた。帝劉禅りゅうぜんのおどろきと優渥ゆうあくな勅を帯して夜を日に継いで急いでいるとは聞えていたが、——なおまだここ五丈原にその到着を見なかった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも優渥ゆうあくなるみことのりと大将軍の印綬いんじゅを賜わってそれに向うのだ。義貞はすでに尊氏を呑んでいた。やがて下された祝酒の一ト口にさえ、それは色になって彼のおもてをほの紅くした。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
微賤、遠くにいながら、またひとたびの朝覲ちょうきんもせず、さきに優渥ゆうあくなる天恩に接す。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、優渥ゆうあくなるみことのりを降した。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)