偽君子ぎくんし)” の例文
御身おんみは愛を二、三にも四、五にもする偽君子ぎくんしなり、ここに如何いかんぞ純潔の愛をもてあそばしめんやと、いつも冷淡に回答しやりたりき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
さればこそ、他人を偽君子ぎくんしと呼び、不忠不義とののしり、あるいは説教するに聖人の句を引用して人をつみするごとき面白おかしいことがとかくありがちである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
盗跖とうせきという大盗と、議論をたたかわし、偽君子ぎくんしの皮をヒンかれて、説法に出向いたやつがあべこべに、まる裸の人間をさらけ出して、二の句もなく、逃げ帰っているではないか。
見識も高尚こうしょうで気韻も高く、洒々落々しゃしゃらくらくとして愛すべくたっとぶべき少女であって見れば、仮令よし道徳を飾物にする偽君子ぎくんし磊落らいらくよそお似而非えせ豪傑には、或はあざむかれもしよう迷いもしようが
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
代助は父に対する毎に、父は自己を隠蔽いんぺいする偽君子ぎくんしか、もしくは分別の足らない愚物か、何方どっちかでなくてはならない様な気がした。そうして、そう云う気がするのが厭でならなかった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あの男は表裏があるという一言にて、他の事を聞くまでもなく、あてにならぬ偽君子ぎくんしなりと解せられる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
代助は父に対するごとに、ちゝは自己を隠蔽いんぺいする偽君子ぎくんしか、もしくは分別の足らない愚物ぐぶつか、何方どつちかでなくてはならない様な気がした。さうして、う云ふ気がするのがいやでならなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これも生活上における表裏の一つではないか。かく時に応じてその態度たいどを改むることは、いて偽君子ぎくんしの行為といわんよりは、むしろ世上における普通の礼である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)