佩刀はかせ)” の例文
また、修法のから、脇廊下わきろうか此方こなたへ参らるゝ資治卿の方は、佩刀はかせを持つ扈従こしょうもなしに、ただ一人なのである。御家風ごかふうか質素か知らない。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かまわないのは、誰よりも、太閤であった、無造作に彼に佩刀はかせを預けることさえあった、多感なそして若い刑部は涙をこぼした事がある。
大谷刑部 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小姓は持っていた佩刀はかせを、刀架かたなかけにかけて去った。内膳はちょっとためらったが、しかしこれも入側いりがわへさがった。
上樣の佩刀はかせ、彦四郎貞宗とやら——東照宮樣傳來でんらいの名刀だといふことでございました——そのとぎから拵への直しを、父がお引受してお預り申上げてゐるうちに
そうしてうしろのお小姓は、飾り仕立てのお佩刀はかせを、これまた恭しく捧持して神妙に畏まり、その物々しさ大仰さ、物におどろかない退屈男も、思わず目をそば立てました。
佩刀はかせ近く
猟奇歌 (新字旧仮名) / 夢野久作(著)
上様の佩刀はかせ、彦四郎貞宗とやら——東照宮様伝来の名刀だということでございました——その研から拵えの直しを、父がお引受けしてお預り申上げているうちに
光圀は、離した手をうしろへ伸ばして、佩刀はかせった。それは法城寺正弘ほうじょうじまさひろの作という。抜くやいな
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それでわかった、もうなにも申すことはない、直孝のことはくれぐれもたのむぞ、心ばかりのひきでものだ、これをとらす」そう云って直政は佩刀はかせをとってさしだした。
青竹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
將軍の佩刀はかせ、——東照宮傳來といふ由緒のある品が、僞物と掏り替つた上、その爲に世上の口に上る騷ぎまで起しては、係の役人の面目が立たないことになるのです。
「あらぬ疑惑ぎわくをもって当家の内秘をのぞかんとする天満のやせ浪人、船出の別宴によいさかなじゃ、重喜がみずから血祭りにしてくりょう! 女中おんなども、誰かある! 佩刀はかせを取れ」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一人は佩刀はかせささげていたが、他の二人のうち、永井民部という小姓頭は、ときどき身をかがめて、光辰になにごとか注意をし、すると光辰は出かかっていた欠伸あくびを半分でやめたり
若き日の摂津守 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
将軍の佩刀はかせ、——東照宮伝来という由緒のある品が、偽物とり替った上、そのために世上の口に上る騒ぎまで起しては、係の役人の面目が立たないことになるのです。
けれど、その市松よりは、秀吉のかたわらに、佩刀はかせを持って、ちょこなんと坐っていた虎之助のほうが、いまの主人のことばを、じっと心から聞き入っていたふうであった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それ以上、さえぎれば、手にしていた佩刀はかせが、何者をも真二まっぷたつにしかねない血相なのである。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小姓の虎之助と市松のふたりが、彼の佩刀はかせをささげて、扉口とぐちのそとにかしこまっていた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
佩刀はかせを持った小姓こしょうは、彼の早い足の後から小走りにいて行った。
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お佩刀はかせ
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)