つて)” の例文
旧字:
つてを求めて権門貴戚きせきに伺候するはおろか、先輩朋友の間をすらも奔走して頼んで廻るような小利口な真似は生得しょうとく出来得なかった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
かくよめれども、国あまた隔てぬれば、いひおくるべきつてもなし。世の中さわがしきにつれて、人の心も恐ろしくなりにたり。
おんなじでんでマドリッドへ来るやつてを求めてこの旅館の料理人コックに私はなったのである。そして機会を待ったのである。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
伝道師になつてかましてやろかと思つて居るね……然しつてが無いので、それで本部のある処を君に聞いて居るのやがな……わしも、監獄から出て
支那の方へ行ったとかいう夫の口へ、せめて乾した蕨が一本でも入るようなつては有るまいか、とも思ってみた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
すると女の艶書いろぶみつて児守子こもりっこに頼んで手紙を其のおさむれえに渡すと、おさむれえが惚れた女からよこした手紙だから飛立つように喜んで、其のふみを開いて読んでしまい
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そのことを、ひとつつてをもってあなたからお寺の方へ交渉をしてみていただくことはできますまいか。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そういうものも今ではつてを求めてしつこく頼まなければ得られぬことになっておる。
この間から花子という日本の女が variétéワリエテエ に出ているということを聞いて、それを連れて来て見せてくれるように、つてを求めて、花子を買って出している男に頼んでおいたのである。
花子 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そうして弘長二年の頃法然の孫弟子の敬西房きょうさいぼうという者が(これは法蓮房の弟子)関東へ下る時に、法然のつてを持たせてやった処、数日それを読んで、法然との間に手紙の往復があったが
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
今朝其方そち隠語の紙片と独楽とを、わしの許まで持って参り、お館の中に女の内通者あって、女猿廻しと連絡をとり、隠語の紙をつてとして、お館内の名器什宝を、盗み出すに相違ござりませぬ。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
豊雄、此の事只今は一四九面俯おもてぶせなり。人つてに申し出で侍らんといへば、親兄にいはぬ事を誰にかいふぞと声あららかなるを、太郎の嫁の一五〇刀自とじかたへにありて、此の事一五一おろかなりとも聞き侍らん。