仮令よし)” の例文
旧字:假令
あるい不甲斐ふがいない意久地が無いと思いはしなかッたか……仮令よしお勢は何とも思わぬにしろ、文三はお勢の手前面目ない、はずかしい……
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
私は家人に「御宅おたくでは、こんなに昼間鼠が騒ぎますか」と訊ねて「いいえ、そんな事はありません」と云う様なことを聞いた事も度々たびたびある、仮令よし、それが鼠としても
頭上の響 (新字新仮名) / 北村四海(著)
仮令よしや文芸上の大傑作であっても、其読者が低級で作の真髄に触れるだけの能力なくば、猫に小判、寧ろ時間浪費の損あるのみ、真珠と瓦礫いしころとの区別がつかない米屋の小僧
もう今ごろは石の砕片きれっぱし、一ツなかろう、仮令よしあってもそれが墳墓であったことを、姉小路卿なる国司の在りし世を忍ばせる石であったことを、誰が知ろう、月の世界に空気なく
梓川の上流 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
仮令よしそれがグヰンであったとしたところが、彼女は自分をすてゝ逃げたのではないか。
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
仮令よし、これ程明瞭には考えないでも、心の奥では、それを意識していはしなかったか。
恐ろしき錯誤 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
仮令よし其様そんな気がないにもせよ、お筆さんばかり悪い身装をして来る訳にもいきますまい、是は台なしに成って今は不粋ぶいきですが、荒っぽい小紋が有るんです、いンじゃアないんですが
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
だから、私は仮令よし真面目な勉強をするようになった後でも、試験の前々から決して苦しむようなことはせず、試験のその前夜になって、始めてしらべて置くというような方法をっていた位である。
私の経過した学生時代 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
仮令よしそれ等は実説にもしろ、人の痛いのなら百年も我慢すると云う昇が、自家じぶんの利益を賭物かけものにして他人の為めに周旋しようと云う、まずそれからが呑込めぬ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
仮令よし何様どんな訳で出来たからってお前の子に違いないものだから、手放して他人ひとるは人情として仕悪しにくかろう、それは己もく察してはいるが……、此の子供等が独り遊びでもするようになって見な
周旋とりもっもらッて課長さんに取入ッて置きゃア、仮令よしんば今度の復職とやらは出来ないでも、また先へよって何ぞれぞれお世話アして下さるまいものでも無いトネー、そうすりゃ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)