他所ほか)” の例文
しめしは江戸四宿の内只此品川のみ然れば遊客いうきやくしたがつて多く彼の吉原にもをさ/\おとらず殊更ことさら此地は海にのぞみてあかつきの他所ほかよりも早けれど客人まろうど後朝きぬ/″\
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
隅田川筋一帶がさうではあるが、他所ほかは近代的美を徐々に造りつつあるとき、兩國橋附近もぢきにさうなるであらう。
花火と大川端 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
何とかしてこの少年の希望を他所ほかへ転換出来ないものかと苦心しいしい、今度は別の方向から質問してみた。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そうして桂子はいつの場合でも、小次郎を他所ほかへやろうとはせず、自分のそばへばかり引きつけて置いた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「なに百円寄越す。」大杉氏はにやりと氷のやうな冷たいゑみもらした。何処へ往つても刑事が附きまとふといふ事なら、百円貰つて他所ほか引越ひきこしても悪い事はなかつた。
もつと至極しごくの事で、他所ほかの水はびんたくはへて持ち寄りをしたのだから、時間ときが経つて死水しにみづになつてゐる。加茂川のはたてだけに水がきてゐる。美味いに不思議はない筈だ。
「断るまでもないがその代りに、お取調の模様は言う迄もない、今日お目付へお眼にかかった事までも、事件ことが片付かぬうちに他所ほかへ洩らいたなら、アンタの首がないけになあ。その積りで承知して置いて貰わんと……」