二言にごん)” の例文
……お分りであろう。……火鉢などは、問題でない。藤兵衛もそれを聞いて、二言にごんとない顔。もう一切、お気づかい無用じゃ。
べんがら炬燵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だから、ここでも、講釈を聞きに行かないかとすすめられて、打てば響くように、その商売心をそそのかされたものですから、二言にごんともなく
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「きみの素性すじょうがなんであるか、だれにもいうものではない。このとおり手をさしのべて約束する。ひとりの男にひとつのことば。男子に二言にごんなし。」
鬼上官おにじょうかん二言にごんと云わずに枕の石をはずした。が、不思議にもその童児は頭を土へ落すどころか、石のあった空間を枕にしたなり、不相変あいかわらず静かに寝入っている!
金将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「そうか。それは本当じゃな。男の言葉に二言にごんはないな——というて相手がお前じゃ仕様しようがないが……」
蟠「知れたことだ、どんなことがあっても返さぬぞ、ぜ言葉を返す、武士に二言にごんはないわ」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
にあるもの二言にごんい。よろこいさんで、煙管きせるつゝにしまふやら、前垂まへだれはたくやら。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
のまま二言にごんといわず即死してしまったのです。
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「よいとも、武士のことば二言にごんはない」
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
宇治山田の米友ならば、二言にごんに及ばず、ここで啖呵たんか素槍すやりの火花が散るべき場合だが、与八では根本的に問題にならない。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「長袖ながら、二言にごんは御座無く候。然れば、娘御の命か、泥烏須如来か、何れか一つ御棄てなさるる分別肝要と存じ候。」斯様かやう申し聞け候へば、篠、此度は狂気の如く相成り
尾形了斎覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
二言にごんをいうぞ、伝右殿が来たと思うて」
べんがら炬燵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
粕理窟かすりくつを言う場合でないぞ、二言にごんと盗賊呼ばわりをなさば、それこそ容赦ようしゃはない。そのほかに聞きたいとは何だ」
うし袈裟げさに、ザックリと思う壺に浴びせられて、二言にごんともなく息が絶えている形であります。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)