久々ひさびさ)” の例文
大先生の尊顔そんがん久々ひさびさにておがみたいし、旁々かたがたかの土地を見物させて貰うことにしようかと、師恩しおんあつき金博士は大いに心を動かしたのであった。
その時の夢に、米友は故郷のあいやまを見ました。自分の身が久々ひさびさで故郷の宇治山田から間の山をめぐっているのを認めました。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ばかにするのか? 地獄じごくから、やっとしてきたおれたちにかって、幸福こうふくしまとはなんのことだ?おまえがたは、久々ひさびさかえってきたものを侮辱ぶじょくするつもりなのか。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
また遠く南のかた澎湖島占領の事に従いしが、六月初旬その乗艦のひとまず横須賀に凱旋する都合となりたるより、久々ひさびさぶりに帰京して、たえて久しきわがの門を入りぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
かつは喜びかつは動悸ときめきながら、看守に伴われて面接所に行き見れば、小塚氏は微笑を以て妾を迎え、久々ひさびさ疎音そいんを謝して、さていうよう、自分は今回有志者の依頼を受けて
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
ルピック氏は、真情流露しんじょうりゅうろを逆に行く人物だから、久々ひさびさで彼の顔を見たよろこびを、揶揄やゆの形でしか表わさない。向こうへ往きがけに彼の耳をはじく。こっちへ来がけには、ひじ小突こづく。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
これは唯自分で覚えているだけで人に話した事はありません、今日初めて位のものでありますが、このあいだ或所で杉浦先生に久々ひさびさぶりで御目に掛った。大分先生も年を取っておられる。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
久々ひさびさに家を出づれば春のどろ
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「みんな帰って来たよ、久々ひさびさにてお目見え、お馴染なじみの一座、なんて書いてあるよ」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
近来は金田の邸内も珍らしくなくなったから、滅多めったにあちらの方角へは足が向かなかったが、こう御目に懸って見ると、何となく御懐おなつかしい。鈴木にも久々ひさびさだから余所よそながら拝顔の栄を得ておこう。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)