中毒あた)” の例文
どの道そんな蕎麦だから、伸び過ぎていて、ひどく中毒あたって、松住町まつずみちょう辺をうなりながら歩くうちに、どこかへ落してしまいましたが。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
行動的の中毒あたり方はいろいろあろうが、食後三十分間後、すぐに死斑ジアノーゼを顔に生じるような怖れなどは、絶無だと僕は信じるほうの組だ。
河豚 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中毒あたるのを承知で買つた、といふ皮肉で、平日貧乏人と見下される側から、旦那側の、金持ち吝嗇をあざけつたものだ。
初かつお (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
「まあ、鰻に中毒あたつたのですつて、あなたが独りでなんぞおいでなさる罰ですよ。辰夫。もうおまへもお父さんと二人きりで行くのはおよしよ。」
父の死 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
御承知か知りませんが、鰒に中毒あたると何もかも痲痺しびれてしもうて、一番しまい間際がけ聴覚みみだけが生き残ります。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
子供の時に中毒あたったことのある食物が一生嫌いになってしまうように、このような・人類や我々の遊星への単純な不信が、もはや観念としてではなく、感覚として
狼疾記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「食うと中毒あたると云うなぞなんだろう」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あの、饂飩うどんたたりである。鶫を過食したためでは断じてない。二ぜん分をみにした生がえりのうどん粉の中毒あたらない法はない。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「姉さんかい。姉さんは相変らず静かに寝てゐるよ。お前が鰻に当つたと云つたら、姉さんは私も中毒あたつてもいゝから食べて見たいつて云つたさうだよ。」
父の死 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
『……甘いこと云うな。ふくをば喰いらんような奴は、博多の町では育ち能らんぞ。今から慣らしておかにゃ、詰まらんぞ。中毒あたって死ぬなら今のうちじゃないか』
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「辰夫と俺とは昨夕ゆうべの篠原の鰻に中毒あたつたらしい。薬を飲まして寝かしてやれ。俺も寝る。」と父が答へた。
父の死 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
『馬鹿な事ばしなさんな。年端としはも行かん児供こども中毒あたって死んだならどうしなさるな』
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
貧乏は知らないと云ってもいから、愚痴になるわけはないが、自分の親を、その年紀としで、友達の前で、呼ぶに母様をもってするのでも大略あらかた解る。酒に酔わずにアルコオルに中毒あたるような人物で。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「や、中毒あたったか。」