不祥ふしょう)” の例文
「国の習いで、抜けば鞘を叩き割るのが、血を見ずに鞘へ納まったは今日が初め、まあ仲裁ぶりにでて不祥ふしょうするわ。時に貴殿のは」
何という不祥ふしょうな出来ごとだろう。帝都の運命が累卵るいらんの危きにあるのに、その生命線を握る警備司令部に、この醜い争闘が起るとは。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
知らばっくれて払いに出ます事が幾許いくらもございます、左様な不祥ふしょうな品と違いまして、出所も分って居りますから何かと存じまして
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「柳生を救うため、また、日光御造営に関して、不祥ふしょうな出来事を防ぎますために、ここは上様、一計が必要かと存じますが」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
これを筆にするも不祥ふしょうながら、億万おくまん一にもわが日本国民が外敵にうて、時勢を見計みはからい手際好てぎわよみずから解散するがごときあらば、これを何とか言わん。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
俺が覚えてからも、むを得ん凶事で二度だけは開けんければならんじゃった。が、それとても凶事を追出いたばかりじゃ。外から入って来た不祥ふしょうはなかった。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こんな不祥ふしょうな年は早く送ってしまいたいと云うのも普通の人情かも知れない。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
不祥ふしょうなことをいうな、口を慎め、——いらぬことをいう男じゃ」
討たせてやらぬ敵討 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
「先生先生何をおっしゃるので! はなはだもって不祥ふしょうなお言葉で」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
白衣びゃくえかさねした女子おなごを馬に乗せて、黒髪を槍尖やりさきで縫ったのは、かの国で引廻しとかとなえた罪人の姿に似ている、私の手許てもとに迎入るるものを、不祥ふしょうじゃ、いまわしいと言うのです。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
伯耆ほうきの安綱が悪いのじゃから不祥ふしょうせい……それからまたお前の主人の伊太夫の娘、気の毒ながらお化けのような娘、あれを拙者が嫁にしたいと言うのは、抱いて寝たいからではないぞ
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
村正は徳川家にたたるという奇怪な伝説があるので、江戸の侍は村正を不祥ふしょうの刀として忌むことになっているが、他国の藩士はさのみ頓着しないから、いい相手を見付ければ相当の高値に売れる。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
外から入つて来た不祥ふしょうはなかつた。——其が其の時、きさまの手でいたのか。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「まあ、なんという不祥ふしょうな……」
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)