七重ななえ)” の例文
家族は七重ななえと申す妻とふたり残念ながらいまだ子にめぐまれておりません、もっとも右はすでに御奉行役所へ届け出たとおりでございます
薯粥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
台坐には、十一坐、九重ここのえ坐、七重ななえ坐、蓮坐、荷葉かよう坐、多羅葉たらよう坐、いわ坐、雲坐、須弥しゅみ坐、獅子吼ししく坐、円坐、雷盤らいばん坐等で、壇には護摩壇、須弥壇、円壇等がある。
訥吃とっきつ蹌踉そうろう七重ななえの膝を八重やえに折り曲げての平あやまり、他日、つぐない、内心、固く期して居ります。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ほんに世の中の人々は、一寸ちょっとした一言ひとことをいうては泣き合ったり、笑い合ったりするもので、己のように手の指から血を出して七重ななえ釘付くぎづけにせられたかどの扉をたたくのではない。
奈良なら七重ななえ……奈良朝は七代の御代みよということだが、そのなかで女の帝様は……」
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かざりの鳥には、雉子、山鶏やまどり、秋草、もみじを切出したのを、三重みえ七重ななえに——たなびかせた、その真中まんなかに、丸太たきぎうずたかく烈々とべ、大釜おおがまに湯を沸かせ、湯玉のあられにたばしる中を、前後あとさきに行違い
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
七重ななえなる綾羅うすものの下にちりばめし「悪徳」の金剛石。
喜兵衛は本当に七重ななえの膝を八重やえに折りました。
奈良七重ななえ七堂伽藍がらん八重桜 芭蕉
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
新村は隣り屋敷で、家格は岸島よりやや低く、あるじ勘右衛門かんえもんは七百二十石の中老を勤め、夫婦のあいだに二男一女があり、末娘の七重ななえと出三郎とは幼なじみであった。
艶書 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)