一揉ひとも)” の例文
「美沢さんね、ホラお姉さまの愛人だった人ね、その美沢さんが、さっきここへ来ていたの。そして、一揉ひともめしたのよ。」
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
と、親子のあいだに一揉ひともめくらいはあるのが世間の通例なのに、この母子おやこはそうでない。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まろく拡がり、大洋わたつみうしおを取って、穂先に滝津瀬たきつせ水筋みすじの高くなり川面かわづらからそそむのが、一揉ひともみ揉んで、どうと落ちる……一方口いっぽうぐちのはけみちなれば、橋の下は颯々さっさっと瀬になって
海の使者 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一揉ひともみと取りつめて参りますその容易ならざる気配を見て取ったものでげすから、このがんりきが、このところに御座あっては危うし危うしとお知らせ致しますと、青嵐の親分は心得たもので
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
富山城とやまじょうの神保一族がうるさく国境をおかすので一揉ひともみにふみつぶすべく出馬したものであったが、平定の後、それらの残党どもをくくりあげてみると、信州なまりの者がたくさん兵の中にいたり
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この大軍にかかられた神吉かんきの城も、志方城しかたじょうも、一揉ひともみに揉みつぶされた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一揉ひともみに見えた城が、明日もちない。次の日も陥ちない。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「木曾勢のごとき、一揉ひともみに踏みつぶさん」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(朝駈けして、一揉ひともみに、揉みつぶせ)
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いで、一揉ひともみに」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)