一家いつけ)” の例文
あゝ、のよろこびのなみだも、よる片敷かたしいておびかぬ留守るすそでかわきもあへず、飛報ひはう鎭守府ちんじゆふ病院びやうゐんより、一家いつけたましひしにた。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
彼はつとに起信して、この尊をば一身一家いつけ守護神まもりがみと敬ひ奉り、事と有れば祈念をこらしてひとへに頼み聞ゆるにぞありける。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
まして將軍のお側には、日ごろより佐々木一家いつけとは仲違なかたがひの梶原父子おやこもひかへて居れば、この機に乘じていかなる讒言を申立てんも測られず、油斷せば家の大事……。
佐々木高綱 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
代助の一家いつけは是丈の人数にんずから出来上できあがつてゐる。そのうちでそとてゐるものは、西洋に行つた姉と、近頃ちかごろ一戸を構へた代助ばかりだから、本家ほんけには大小合せて四人よつたり残る訳になる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それに、富山からはつての懇望で、無理に一人娘を貰ふと云ふ事であれば、息子夫婦は鴫沢の子同様に、富山も鴫沢も一家いつけのつもりで、決して鴫沢家をおろそかにはまい。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
おせきが影を踏まれたのは、やはりこゝのうちから帰る途中の出来事で、彼女かれがそれを気に病んでゐるらしいことは、母のお由から伯母にも話したので、大野屋一家いつけの者もみな知つてゐるのであつた。