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ふみすべ
お幾は段を
踏辷らすようにしてずるりと下りて店さきへ駆け出すと、
欄干の下を駆け抜けて壁について今、婆さんの前へ
衝と来たお米、素足のままで、
細帯ばかり
島田の
鬢の白い顔が、宙にかかり、口で銅像の耳を
噛んで
踏辷る
褄の
紅を、二丈六尺、高く釣りつつ、
鏨を右の目に当てて、雪の
腕に、
拳銃を、
鉄鎚に取って
翳した。
燈光はパツと
消える、
船長驚いて
身を
躱す
拍子に
足踏滑らして、
船橋の
階段を二三
段眞逆に
落ちた。
駈寄る岸の柳を
潜りて、水は深きか、宮は
何処に、と
葎の露に
踏滑る身を
危くも
淵に臨めば、
鞺鞳と
瀉ぐ早瀬の水は、
駭く
浪の
体を
尽し、乱るる流の
文を
捲いて、眼下に幾個の怪き
大石