踏辷ふみすべ)” の例文
拓は動じないで、磐石のごとく坐っているので、思わず手を放して、一人で縁側へ出たが、踏辷ふみすべったのか腰を突いた。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わめきつつ身を捻返ねぢかへして、突掛けし力の怪き強さに、直行は踏辷ふみすべらして尻居に倒るれば、彼ははやし立てて笑ふなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
お幾は段を踏辷ふみすべらすようにしてずるりと下りて店さきへ駆け出すと、欄干てすりの下を駆け抜けて壁について今、婆さんの前へと来たお米、素足のままで、細帯ほそおびばかり
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
島田のびんの白い顔が、宙にかかり、口で銅像の耳をんで踏辷ふみすべつまくれないを、二丈六尺、高く釣りつつ、たがねを右の目に当てて、雪のかいなに、拳銃ピストルを、鉄鎚かなづちに取ってかざした。
ただし途中で、桟道さんばし踏辷ふみすべるやら、御嶽おんたけおろしに吹飛ふきとばされるやら、それは分らなかったのです。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)