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ひがしむき
彼はその時
蛇の頭が偶然
東向に倒れているのに気がついた。そうしてその頭の
恰好を何となしに、方角を教える
指標のように感じた。
掃除の
濟んだ
冷りとした、
東向の
縁側へ
出ると、
向う
邸の
櫻の
葉が
玉を
洗つたやうに
見えて、
早やほんのりと
薄紅がさして
居る。
下女を
入れて三
人の
小人數だから、
此六
疊には
餘り
必要を
感じない
御米は、
東向の
窓側に
何時も
自分の
鏡臺を
置いた。
宗助も
朝起きて
顏を
洗つて、
飯を
濟ますと、
此所へ
來て
着物を
脱ぎ
更へた。