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とほりこ
要心を
通越した
臆病な
処へ、
渇くのは
空腹にまさる
切なさで、
一つは
其がためにもつい
出億劫がるのが
癖で。
ね——
義兄さん、……お
可哀相は、
最う
疾くのむかし
通越して、あんな
綺麗な
方が
最うおなくなんなさるかと
思ふと、
真個に
可惜ものでならないんですもの。
まして、さま/″\な境涯を
通過して、
復た逢ふ迄の長い
別離を告げる為に、互に
可懐しい顔と顔とを合せることが出来ようとは。
蘿月は悲しいとか
淋しいとか
然う
云ふ現実の
感慨を
通過して、
唯だ/\
不思議な気がしてならない。