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ぢうたい
『あなたはいま
重態なんですから、お
氣をおちつけて、
靜かにしてゐなければいけませんのよ、
此處?
此處ですか……』
秋の
野分しば/\して、
睡られぬ
長き
夜の、
且つ
朝寒く——インキの
香の、じつと
身に
沁む
新聞に——
名門のお
嬢さん、
洋画家の
夫人なれば——
衣絵さんの(もう
其の
時は
帰京して
居た)
重態が
十
日分の
入院料を
前金で
納めろですつて、
今日明日にも
知れない
重態な
病人だのに——ほんとに、キリスト
樣の
病院だなんて、
何處に
街の
病院と
異ふ
處があるんだ。