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たなくび
前途の路もおぼつかなきまで黒みわたれる森に入るに、
樅柏の
大樹は枝を交はし葉を重ねて、杖持てる我が
手首をも青むるばかり茂り合ひ、梢に懸れる
松蘿は
鬖〻として静かに垂れ
其右の手の
手首をアキルリュウスは手に取りぬ。
笑ふて
聞く
胸ぐるしさ
思ひに
痩し
手首に
取りすがりてお
羨ましやお
高さまのお
手の
細さよお
酢めし
上りしか
御傳授聞きたしと
眞面目に
問ふ
人可笑しくはなくて
其心根羨ましくなりぬ
其の
人々歸り
果てゝより
一時間許待つには
長き
時間ながら
車の
音門にも
聞えず
捨置かれなば
未だしもなれどお
茶參らせよお
菓子あがれ
夜は
しかく陳じて左手をのべ、彼の兩手の
手首を