-
トップ
>
-
こゞえしな
児は母の
懐にあり、母の袖
児の
頭を
覆ひたれば
児は
身に雪をば
触ざるゆゑにや
凍死ず、
両親の
死骸の中にて又
声をあげてなきけり。
堪て吉兵衞
漸々起上り大事を
抱へし身の爰にて
空しく
凍死んも
殘念なりと氣を
勵まし四方を
見廻せば
蔦葛下りて
有を見付是ぞ天の
與へなりと二
品の包みを
脊負纒ふ葛を
捨る
覺悟なれども今
爰て
阿容々々凍死んは殘念なり
人家は無事かと
凍えし足を
曳ながら
遙か向ふの方に人家らしき
處の有を
見付たれば吉兵衞是に力を
得て
艱苦を
忍び其處を目當に
雪を