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かごのなか
それより
一同種々申して
渠を
御前にわびたりければ、
幼君ふたゝび
御出座ありて、
籠中の
人に
向はせられ、「
其方さほどまでに
苦しきか」
「
何なりとも
氣に
協ひたるを、
飽まで
食すべし」と
強附け/\、
御菓子、
濃茶、
薄茶、などを
籠中所狹きまで
給はりつ。
幼君は
眞顏にて、「
苦しからず、
早遣はせ」と
促し
給ふ。さては
仔細のあることぞと
籠中の
人に
齎らせたり。
彼男太く
困じ、
身の
置處無き
状にて、
冷汗掻きてぞ
畏りたる。