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かげばふし
成るたけ
順礼を
遠くよけて、——
最う
人気配に
後へ
振向けた、
銀杏返の
影法師について、
横障子を
裏へ
廻つた。
店は
裏へ
行抜けである。
地上に
長き
影法師を
心細げに
踏んで
行く、いつしか
傘屋の
路次を
入つてお
京が
例の
窓下に
立てば、
此處をば
毎夜音づれて
呉れたのなれど、
明日の
晩はもうお
前の
聲も
聞かれない
あゝ
風情とも、
甘味さうとも——
園は
乗出して、
銀杏返の
影法師の
一寸静つたのを
呼ばうとした。