白鳥はくちょう)” の例文
白鳥はくちょうは、注意深ちゅういぶかくその広場ひろばりたのであります。そして、そこに、一人ひとり少年しょうねんくさうえにすわって、ふえいているのをました。
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)
で、その白鳥はくちょうは、いまとなってみると、いままでかなしみやくるしみにさんざん出遭であったことよろこばしいことだったという気持きもちにもなるのでした。
「渡しましたが——あの娘は——何しろああ云う娘ですし、——白鳥はくちょう山鴉やまがらすになどと——、失礼な口上ですが、——受け取らないと申し——」
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
こう云いながら岩太郎は囲炉裡の側へ近寄って来たが杉右衛門に向かい合って胡座あぐらを掻いた。見ると手に白鳥はくちょうを下げている。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
炉のすみに転げて居る白鳥はくちょう徳利どくりの寐姿忌〻いまいましそうにめたるをジロリと注ぎ、裁縫しごとに急がしき手をとめさして無理な吩附いいつけ、跡引き上戸の言葉は針
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それは八白鳥はくちょうゆきのように白いつばさをそろえて、しずかにりて行くのでありました。伊香刀美いかとみはびっくりして
白い鳥 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
白鳥はくちょうを提げてね、景気よく飲むんだって……当人すでに微酔ほろよいです。お待遠様と持込んだのが、天麩羅蕎麦てんぷらそばに、桶饂飩おけうどん
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「もし、ガンさん、どこへいらっしゃるんです?」と、一白鳥はくちょうびかけながら、アッカのところへちかよってきました。いかにも、同情どうじょうぶかい、まじめな顔つきをしています。
「どうも、あんまり結構な話でもねえ。面白くねえだろうから止めにして、台所には白鳥はくちょうが一本おったっている。熱燗あつかんをつけて、これで中々なかなか好い音声のどなんだ。小意気な江戸前の唄でもきかせようか」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「いずれ又後もつけて貰う。白鳥はくちょうで大釜へつけて持って来い」
怪異暗闇祭 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
白鳥はくちょう予言よげん
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白鳥はくちょうになると自由じゆうそらぶことができる、白鳥はくちょうとおい、とおい、おきのかなたにある「幸福こうふくしま」へんでゆくというのであります。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
百姓家ひゃくしょうや裏庭にわで、家鴨あひるなかうまれようとも、それが白鳥はくちょうたまごからかえ以上いじょうとりうまれつきにはなんのかかわりもないのでした。
それはみにく山鴉やまがらすが美しい白鳥はくちょうに恋をして、ありとあらゆる空の鳥のわらい物になったと云う歌であった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
とうとう七にんまで、少女おとめたちはみんな白鳥はくちょうになってそらの上にがりましたが、いちばんおしまいにがってた八にんめの少女おとめが、ると自分じぶん羽衣はごろもかげかたちえません。
白い鳥 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
小さなアシスズメから、気ぐらいの高い白鳥はくちょうにいたるまで、みんなが、なげきかなしみました。ふだんは仲のわるい野ガモと黒ガモも、いっしょになっておそろしいさいなんのきたことを悲しみました。
はるもすぎて、なつのころには、うお子供こどもは、もう、おおきくなりました。やがて、おかあさんになりました。ちいさな白鳥はくちょうも、おおきくなりました。
魚と白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれどもそれがどうでしょう、もうけっしていまはあのくすぶった灰色はいいろの、るのもいやになるようまえ姿すがたではないのです。いかにも上品じょうひんうつくしい白鳥はくちょうなのです。
といいながら、われわすれてけわしい坂道さかみち夢中むちゅうりて、白鳥はくちょうみずうみほうりて行きました。やっとみずうみのそばまでましたが、もう白鳥はくちょうはどこへ行ったか姿すがたえませんでした。
白い鳥 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
昨夜ゆうべおなゆめた。はじめは白鳥はくちょうが、ちいさなつばさ金色きんいろにかがやかして、そらんでくるようにおもえた。それがわたしむかえにきたふねだったのだ。
希望 (新字新仮名) / 小川未明(著)
王子たちは十一羽のみごとな野の白鳥はくちょうになったのです。きみょうななき声をたてて、このはくちょうたちは、ご殿の窓をぬけて、おにわを越して、森を越して、とんでいってしまいました。
ちょうど、このとき、どこにいて、ねらっていたものか、もう一子供こどもがったとき、一白鳥はくちょうが、たくみに子供こどもをくわえてしまいました。
魚と白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「どうか、わたしたすけてください。おかあさんが、っています。」と、子供こどもは、みずうえを、自分じぶんをくわえてんでいく、白鳥はくちょうかってたのみました。
魚と白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かわいい子供こどもをなくして、白鳥はくちょうは、うたにもなれなかったのです。ただ、だまってくらよるを、ほししたけていました。
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしが、ねえさんにかわってめんどうをてあげます。わたしは、子供こどもをなくした白鳥はくちょうです。これから、あちらのとおくにかえろうとおもっています。
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)
青々あおあおとしたうみには白帆しらほかげが、白鳥はくちょうんでいるようにえて、それはそれはいいお天気てんきでありました。
海の少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのから、白鳥はくちょううみうえいはじめました。よりもあかい、西にし夕焼ゆうやけが、なみおもていろどるころには、そら白鳥はくちょうは、とおい、故郷こきょうにあこがれるもののごとくいたのです。
北海の白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
また、三ねんもたつと、うみうえにうろこぐもがわいたに、そのかい白鳥はくちょうわってしまう。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
むかしから、そのしまへいってみたいばかりに、かみがんをかけてかいとなったり、三ねんあいだうみなか修業しゅぎょうをして、さらに白鳥はくちょうとなったり、それまでにして、このしまあこがれてんでゆくのであった。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「よし、たたかうぞ! なんでわすれるものか。」と勇気ゆうきをとりかえして、さけぶと、たちまち、あわれな囚人しゅうじんたちの姿すがたは、白鳥はくちょうとなって、ゆうやけのする、そらいあがり、ようようとして
(新字新仮名) / 小川未明(著)
まえにこんなことがあったから——いつかこのながれへりた白鳥はくちょうが、たびのおもしろいはなしをきかしてやるからと、たくさんのさかなたちをあつめておいて、ふいに、かわいらしいぶなを三びきもべて
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
同時どうじゆきのような白鳥はくちょうが、無数むすうびたったのであります。
北海の白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、永久えいきゅう白鳥はくちょうは、北海ほっかいおうとなったのであります。
北海の白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)