満足まんぞく)” の例文
旧字:滿足
まだちいさいから、こんななかでもひろ世界せかいおもうのか、満足まんぞくするように、べつにさかなどうしで、けんかをするようすもえませんでした。
川へふなをにがす (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼は自分がまったく死にうせてしまわないようにと、自分の思想しそう一片いっぺんを自分の名もつけずに残しておくだけで、満足まんぞくしていたのである。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
けれどこんなことでまごまごしている最中さいちゅうに、バルブレンのおっかあのまだ生きていることを知って、わたしは大きな満足まんぞくを感じた。
けれども、おかみさんはまだ満足まんぞくしてはいませんでした。おかみさんはよくかわがつっぱって、どうしてもねむることができません。
さっそく、すいたおなかを満足まんぞくさせて、残りをポケットにいっぱいつめこみました。それにしても、パンのあじはすばらしいものでした。
まあ、おたがいに自分じぶんまれついた身分みぶん満足まんぞくして、けもの獣同士けものどうしとり鳥同士とりどうし人間にんげん人間同士にんげんどうしなかよくらすほどいいことはないのだ。
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
いや、侍従や侍女たちまでも、満足まんぞくしているようすをあらわしました。だけど、このことは、たいへんなことなのですよ。
すくふには、天守てんしゆ主人あるじ満足まんぞくする、自分じぶん身代みがはりにるほどな、木彫きぼりざうを、をつときざんでつくなことで。ほかたすかるすべはない……とあつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
頭髪かみみだしているもの、に一まとわない裸体はだかのもの、みどろにきずついてるもの……ただの一人ひとりとして満足まんぞく姿すがたをしたものはりませぬ。
だが、ごんごろがね最後さいごに三つずつらさせてもらうこの「配給はいきゅう」は、お菓子かし配給はいきゅう以上いじょうにみんなに満足まんぞくをあたえた。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
道子みちこ其辺そのへんのアパートをさがして一人暮ひとりぐらしをすることになつたが、郵便局いうびんきよく貯金ちよきんはあらかた使つかはれてしまひ、着物きものまで満足まんぞくにはのこつてゐない始末しまつ
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
くるしみかろんずるとか、なんにでも満足まんぞくしているとか、どんなことにもおどろかんとうようになるのには、あれです、ああ状態ざまになってしまわんければ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
去って一月、また二月、保護者にうながされて書いた手紙だろうが、時々無事と疎開地生活の満足まんぞくを知らせてくる。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
これは有名ゆうめいかいの火という宝物たからものだ。これは大変たいへんな玉だぞ。これをこのまま一生満足まんぞくっていることのできたものは今までに鳥に二人魚に一人あっただけだという話だ。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
されどもすこぶる種々の有益なる材料ざいれうを得来りしは余の大に満足まんぞくとする所なり、動物にては鹿しかくまおほくして山中に跋扈ばつこし、猿、兎亦多し、蜘蛛類、蝨類のめづらしき種類あり
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
秀吉ひでよしの目がほそくなる。わかわかしい希望きぼう権化ごんげのような顔にいッぱいな満足まんぞくがかがやく。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
くちびるには、さも満足まんぞくげなほおえみがうかび、柔和にゅうわな目には、深いよろこびの色があった。
美しき元旦 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
去れどもまことなる信仰の教法より視れば、此ねがひも此満足まんぞくきが如くに果敢はかなきものなり。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はやりの運動靴うんどうぐつを買ってもらえないことを、人間の力ではなんともできぬ不況のせいとあきらめて、むかしながらのわらぞうりに満足まんぞくし、それが新らしいことで彼らの気持はうきうきした。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
すべてのよろこび満足まんぞく自負じふ自信じゝんも、こと/″\く自分をツてしまツて、かはり恐怖きようふが來る。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
それを専門せんもんにしているきえちゃんには、それほどむずかしい芸当ではありませんが、今日はじめてそれをやる新吉にはむずかしいどころか、その中の一つのげいだって満足まんぞくに出来るはずはないのです。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
また私は、ただお金持で、ぼんやり家にいるのでは、どうも満足まんぞくができなくなりました。旅をして、いろいろのぼうけんをしたいと思う心が、おさえても、おさえても、どうしてもやみませんでした。
それであんな満足まんぞくそうな顔をしたのに違いあるまい。
香水紳士 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
しかし、そのようすをると、それに満足まんぞくしているようにもおもわれるが、それも、ものがいえないからだろうとかんがえられるのでした。
自由 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれども、人びとは、この平野がゆたかで、親切しんせつなのに、満足まんぞくしたものでしょう。できるだけこれをかざりたててやろうとしました。
だれもお礼をいうのをわすれるほどそれにれきっていた。彼のほうでは、贈物おくりものをすることがうれしくて、それだけでもう満足まんぞくしてるらしかった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
「どうもお口にかなって満足まんぞくです。それではおさけだけではおさびしいでしょうから、こんどはおさかなをいたしましょう。」
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そして、きょうはうまいことをやったもんだと、すっかり満足まんぞくしていました。やがて、ネコがうちにかえってきますと、ネズミがたずねました。
おっかあも、それだけの便たよりで満足まんぞくしていた。ご亭主ていしゅがたっしゃでいる、仕事もある、お金がもうかる——と、それだけ聞いて、満足まんぞくしていた。
じつわたくし貴方あなたとの談話だんわにおいて、このうえ満足まんぞくましたのです。で、わたくし貴方あなたのおはなし不残のこらずうかがいましたから、こんどはどうぞわたくしはなしをもおください。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
左様さようでございますか。どんなに本人ほんにんにとりまして満足まんぞくなことでございましょう。』とはは自分じぶんのことよりも、わたくし前途ぜんとにつきてこころつかってくれるのでした。
五体ごたい満足まんぞく彫刻物ほりものであつたらば、真昼間まつぴるま、お前様めえさまわしとが、つら突合つきあはせた真中まんなかいては動出うごきだしもすめえけんども、つき黄色きいろ小雨こさめ夜中よなか、——ぬしいまはなさしつた、案山子かゝし歩行あるなかれたら
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
全体ぜんたい駄目だめです。どいつも満足まんぞくの手のあるやつはありません。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「いい子供こどもまれて、親木おやぎは、それで満足まんぞくして、れていくんですよ。人間にんげんも、かわりはありません。」と、はははいわれたのです。
親木と若木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
一ぱいのスープはみるみるわれてしまった。わたしがスープを下にくと、前に立ってながめていたリーズがかわいらしい満足まんぞくのため息をした。
いったい、灰色ネズミというのは、どんな苦しみでもがまんするし、どんなつまらないものにも満足まんぞくする、こわいものしらずのネズミだったのです。
福の子は心のやさしい、美しい若者わかものでしたから、お姫さまは心から満足まんぞくして、ふたりでたのしくくらしていました。
「よろしゅうございます。ねずみがわるささえしなければ、わたくしどももがまんして、あわびかいでかつぶしのごはんやしるかけめしべて満足まんぞくしています。」
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ひとから尊敬そんけいされるとそれに感じ易い老人ろうじんの方は、ことにそうだった。二人はルイザがそばで顔を真赤まっかにするほどひどい常談じょうだんあびせかけて、それで満足まんぞくした。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
いく丁斑魚めだかでも満足まんぞくられんなら、哲学てつがくをせずにはおられんでしょう。いやしくも智慧ちえある、教育きょういくある、自尊じそんある、自由じゆうあいする、すなわかみぞうたる人間にんげんが。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
するとおじいさんは満足まんぞくらしい微笑びしょう老顔ろうがんたたへて、おもむろにわれました。——
けんとして満足まんぞくうちっていないばかりか、たいていは、なみにさらわれてしまったとみえて、一めんてた野原のはらわっていたのです。
塩を載せた船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
マチアはそう機械的きかいてきに言って、あたかもこの子どももばっせられると思うのがかれに満足まんぞくをあたえるもののようであった。
わかい王さまは、おきさきさまをたいそうかわいがり、心から満足まんぞくしていました。けれども、あいもかわらず
こうねこたちがこえをそろえていますと、和尚おしょうさんも満足まんぞくらしく、にこにこわらって
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
父親ちちおやは、いくらかのかねして、そのオルゴールをいました。しかし、そのかねは、おじいさんを満足まんぞくさせなかったようです。
汽船の中の父と子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれどもいまはその雌牛めうしとも、わたしたちはわかれなければならなかった。『雌牛を売る』それでなければ、もうご亭主ていしゅ満足まんぞくさせることはできなかった。
ですから、にいさんたちはいつも満足まんぞくしきって、妹といっしょになかよくくらしていました。
そして、しばらくふで使つかっていましたが、やっと、それで満足まんぞくしたように、をながめて、はしごをりると自分じぶんうちほうかえってゆきました。
生きている看板 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしはいつまでも温室のフレームばかりには使われていなかった、元気が回復かいふくしてきたし、自分もなにか地の上にまいてみるということに満足まんぞくを感じてきた。