黒色こくしょく)” の例文
けれど、そこにも、ここにもれるうおは、みんな黒色こくしょくのものばかりであって、一つとして金光きんびかりをはな大魚おおうおはかからなかったのでありました。
金の魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さればかの黒色こくしょく白色はくしょくとの強き対照によりて有名なる雪中相合傘せっちゅうあいあいがさの図の如きは両個りょうこの人物共に頭巾ずきんかぶれるがため男女の区別全く判明しがたきものとはなれり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
深い擦過傷が所々しょしょに喰い込み、労働服の背中にはまだ柔い黒色こくしょくの機械油が、引き裂かれた上着の下のジャケットのあたりまで、引っこすった様にべっとりと染み込んでいる。
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
灯火管制の用意に黒色こくしょく電灯カバーを作ったり、押入おしいれを改造して、防毒室を設けたり、配電所に特別のスイッチをもうけたりして、骨身をおしまないのは、感心にたえなかった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
夕立雲の黒色こくしょくに変り、百花の乱れ咲いた、なまめかしき丘々も、今は物凄い黒入道くろにゅうどうそびえ、あの騒がしい人肉の津浪も、合唱も、引潮の様に消え去って、夜目にもほの白く立昇る湯気の中には
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
四、ロス大佐 白銀(黒色こくしょく帽、赤色短衣ジャケツ
ゴンクウルは歌麿が蚊帳美人かちょうびじん掛物かげものにつきて、その蚊帳の緑色りょくしょく女帯おんなおび黒色こくしょくとの用法の如き全く板画にのっとりしものとなせり。肉筆画の木板画に及ばざるの理由は布局ふきょくの点なり。
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
また、のほうからは、まったくなれない黒色こくしょくのくもが、おそらく、このあたりにすむのであろうが、どうして、みずをわたったものか、冒険ぼうけんをおかして、やはりものをねらっているのでした。
雲のわくころ (新字新仮名) / 小川未明(著)
ゴンクウルは歌麿が蚊帳美人かちょうびじん掛物かけものにつきて、その蚊帳の緑色りょくしょく女帯おんなおび黒色こくしょくとの用法の如き全く板画にのっとりしものとなせり。肉筆画の木板画に及ばざるの理由は布局ふきょくの点なり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
国貞はまた常に薄紅うすべに薄藍うすあいの如き薄色地の衣裳と、殊更ことさらに濃くしたる黒色こくしょくを用ゆる事を好む。国貞の風景画には名所の山水を背景となし半身の人物を描ける東海道名所絵の続物つづきものあり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)