麿まろ)” の例文
「あ痛ッ。よろしい。あなたはその美しい繊手せんしゅで、麿まろの頬を打った。麿も暴力をもって報いますよ。火のごとき愛情の暴力で」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
麿まろにはそのようには思われぬよ。何らか深い思惑があって、楽書きをしたものと思われるよ。麿に遠慮をすることはない。そちの思惑を話すがよい」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
袴野はかまの麿まろを真中に十人の荒くれ男が峠路とうげみちにかかる供ぞろいの一行を、しんとして展望していた。
麿まろが此の山へ登ったのは、三つの歳であったそうだが、そなたは四つになるまで在家ざいけに居たと云うではないか。そんなら少しは浮世の様子を覚えて居てもよさそうなものだ。
二人の稚児 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「桑畑であろうと、牡丹畑であろうと、こう雪が降り積って、蕭条しょうじょうととした有様では同じことじゃ。吉野は麿まろたちに風邪かぜを引かせる趣向か」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「うむ」というとりっぱな公卿は、また顔をゆすってうなずいてみせたが、「そち、この麿まろを存じているかな?」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そなたも麿まろも、その恐ろしい女人を母に持って、一度は膝に掻き抱かれた事もあるのに、こうして今日きょうまでつゝがなく育って来た。それを思うと、女人は猛獣や大蛇のように、人を喰い殺したり毒気を
二人の稚児 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「どこぞ、この辺りの麿まろでござりましょう。私が、近づいてうかがっているのも知らず、一念に、三体の弥陀みだの像を土で作っているのでございます」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ところでわざわざ遠い宇治から麿まろを訪ねて参られた。火急の用のあってかな」
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
嵯峨さが仁和寺にんなじに、麿まろ親身しんみ阿闍梨あじゃりがわたらせられるほどに、ひとまずそれへおされて、しばらくは天下の風雲ふううんをよそに、世のなりゆきを見ておわせ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はてな? 麿まろには解らぬが」
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「これこれ、いったい麿まろたちをどこへ連れてゆくのじゃ。ここは桑畑ではないか」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なに、法皇のお心変りは、時雨しぐれのようなもの、降ると思えば照る、照ると思えば降る——。明日あすにてもまた、麿まろが参内して御心を励ませば、必ず次の集まりには、御参会ごさんえあるにちがいない」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(武家ばかりが人間のような世の中に、なんで麿まろ公卿くげに生ましめたか)
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まあ、いいじゃないですか。あなたは見ず知らずというが、麿まろはもう夢に見るまであなたを前々から恋していた。ここでお会いしたのは、東岳廟とうがくびょうのおひきあわせだ。ああ、そのおくち、そのおん眼」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「だれじゃ、麿まろめるものは」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)