魔除まよけ)” の例文
魔除まよけ鼠除けの呪文、さては唐竹割からたけわりの術より小よりで箸を切る伝まで十銭のところ三銭までに勉強して教える男の武者修行めきたるなど。
半日ある記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
要するに涅歯を魔除まよけとする南島一般の思想に、鍛冶屋は来たり参与しているのである。槖籥とは吹子ふいごすなわち蹈鞴たたらの道具である。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
旅をして歩く時に興に乗じてうたう歌、危険な山坂を超ゆる時、魔除まよけを兼ねて歌いつけの歌、心なく歌っても離愁りしゅうの思いが糸のように長く引かれる。
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
伴「なにらたちにはなんだか訳が分らねえが、幽霊は此奴こいつがあると這入へいられねえという程な魔除まよけのおまもりだ」
と言つたやうな訳で、提督の写真は英国婦人の仲間に、魔除まよけのお守符まもりなにかのやうに大層流行はやつてゐる。
そのくせ、はじめは運転手が、……道案内の任がある、つは婦連おんなれんのために頭に近い梟の魔除まよけの為に、降るのにわざと台から出て、自動車に引添って頭から黒扮装の細身に腕を組んだ
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
死顔は冷かにあをざめて、血の色も無く変りはてた。叔父は例の昔気質むかしかたぎから、他界あのよの旅の便りにもと、編笠、草鞋わらぢ、竹の輪なぞを取添へ、別に魔除まよけと言つて、刃物を棺の蓋の上に載せた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「まあお恥かしいこと、あんなのは歌でもなんでもありゃしません、魔除まよけにああして声を出し歩くだけのことで」
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
斯様かような事にならないように、新幡随院の良石和尚に頼んで、有難い魔除まよけ御守おまもりを借り受けて萩原の首を掛けさせて置いたのに、うも因縁はのがれられないもので仕方がないが
道中だうちう魔除まよけるのさ。」
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)