みこ)” の例文
今度はさざえの殻ぐらいでなく、短刀か匕首あいくちでも忍ばせて来たかも知れない。それを思うと、二人は魔物にみこまれたように怖ろしくなって来た。
恨みの蠑螺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何も体裁を言うには当らない、ぶちまけて言えば、馬鹿な、糸七は……狐狸こりとは言うまい——あたりを海洋に変えた霧にみこまれそうになったのであろう、そうらしい……
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その草の葉を肌守はだまもりのなかに入れておくと、大蛇に出逢わないとか、みこまれないとかいうので、女子供は争ってむしり取る。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
源兵衛が黒ん坊にむかって冗談の約束をしたことなどは誰も知らないのであるが、なにしろ黒ん坊のような怪物にみこまれた女と同棲するのは不安であった。
くろん坊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これみこまれたのがの冬子で、彼等は吉岡家へ忍び寄って窺ううちに、便所へかよった冬子は手を洗うべく雨戸を明けたので、彼等は矢庭やにわに飛びかかって彼女かれを捉えた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
こうして、幾年をるあいだに、自宅の座敷も台所も寝間も一面に画虎を懸けることになって、近所の人たちもおどろき怪しみ、あの老人は虎にみこまれたのだろうなどと言った。
われらに一度みこまれて、眼に見えぬ糸につながれたが最後、いかにもがいても狂うても所詮かなわぬということがまだ覚られぬか。覚ったら速かに心をひるがえして我々の味方になられい。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一度みこんだら必ず逃がすまいとしているような、いかにも執着の強そうな眼の光りと顔の色——その印象が小坂部の胸に深く刻み付けられて、かれの恐怖はだんだんに強く大きくなって来た。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
蛇にみこまれたとか、蛇にたたられたとかいうたぐいの怪談は、むかしから数え尽されないほどであるが、これからお話をするのは、その種の怪談と少しく類をことにするものだと思ってもらいたい。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
武昌ぶしょう張氏ちょうしの嫁が狐にみこまれた。