高箒たかぼうき)” の例文
彼がくわ楊枝ようじのまま懐手ふところでをして敷居の上にぼんやり立っていると、先刻さっきから高箒たかぼうきで庭の落葉をいていた男が、彼のそばへ寄って来て丁寧に挨拶あいさつをした。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして竹細工の手つだいをしたり、また近処の家でつくる高箒たかぼうきを背負ったりして、時々東京へ売りに行った。
にぎり飯 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
と、にょっと出た、お源を見ると、取次に出ないも道理、勝手働きの玉襷たまだすき長刀なぎなた小脇に掻込かいこんだりな。高箒たかぼうき手拭てぬぐいかぶせたのを、柄長に構えて、逆上のぼせた顔色がんしょく
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ある人々はそれを臆病者の噂と聞き流して、いわゆる高箒たかぼうきを鬼と見るたぐいに過ぎないと冷笑あざわらっていた。
半七捕物帳:23 鬼娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ここからは四五けんの、芝草の上に奈世は横坐りに坐り、膝の上に高箒たかぼうきを横たえて居た。
(新字新仮名) / 富田常雄(著)
安は連れて来た職人と二人して、なたで割った井戸側へ、その日の落葉枯枝を集めて火をつけ高箒たかぼうきでのたうち廻って匍出す蛇、蟲けらを掻寄せてした。パチリバチリ音がする。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
高箒たかぼうきを片手にたすきがけで、刻足きざみあしに出て行逢ゆきあったのがその優しいおんなで、一寸ちょっと手拭を取って会釈しながら、軽くすり抜けてトントンと、堅い段を下りて行くのが、あわただしい中にも
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)