たばか)” の例文
……ぜひなく村から酒を買ってきて、ここで待つこと今日で四日目というわけだ。しかしどうやらこの勝負は、まんまと、こっちが一ぱいたばかられたらしい
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「瞞そうとまたたばかろうと目差す悪人をしょぴきさえすればそれで横目の役目は済む。卑怯呼ばわりは場違いだ!」
三甚内 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
法体ほったいと装ひて諸国を渡り、有徳うとくの家をたばかつて金品をかすめ、児女をいざなひて行衛をくらます、不敵無頼の白徒しれものなる事、天地に照して明らかなり、汝空をかけり土にひそむとも今はのがるゝに道あるまじ
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
(俺は、お人好しだ。武蔵にたばかられたのだ。そのにせものの友情に涙をこぼしたりなどして……)
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
即座に縛り首だ! 五郎蔵め、思い知るがいい! ……お浦もお浦だ、女の分際で、色仕掛けで俺をたばかり、殺そうとは! どうともして引っ捕らえ、なぶり殺しにしてやらなけりゃア!
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
先々まずまず、冬中は筑前をたばかりおいて、明春、雪解けの頃を待ち、一挙に宿敵をほふり去ろうぞ。兵馬、軍糧、そのほかの備え、すべて雪のうちのこと。おぬしらも抜かりあるなよ」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今金のかどで二人は別れ、松田は本郷から俥に乗り浦和の知人を訪ねようとした処、この車夫たるや余人に非ず敏腕石田刑事だったので、板橋の先の志村の旅舎やどたばかられて他愛無く捕らわれた。
小寺政職まさもとを説くと偽り、また荒木村重を談合のうえで降してみせるとたばかり、信長をして、ここ十数日も手出しをひかえさせたのは、まったく官兵衛孝高めの策略であったのだ。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ひ、卑怯者めが、この隠居は、おぬしなどより、四十もよけいに門松を迎えているのじゃぞ。青くさい口先でたばかろうとて、なんで騙られよう。むだ口は聞く要もない。討たれてしまやれ」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「だまれ。多年山より炭薪をり出して職とするその方どもが、かような大きな眼違いをする筈はない。心得て致したとあれば、奉行をあざむき、御領主の国費をたばかり取った大罪と申さねばならぬ」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大蔵は一方の曲者しれもの以上にも正成のその言を怪しんで「——万一でもあったら、てまえの役目が立ちませぬ。どう言葉巧みに殿へ近づいたものかは存じませぬが、構えて、そのむじなにおたばかれなされますな」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ああ、それはむごい。余りといえばたばかり過ぎる」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ちぇッ、うまうまとたばかられた」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なあに、二人に一人。たばかり討てば、のがすものか。あすの夜は、山中あたり、やるにはもって来いの泊りだ。……ただ、野郎にだって欲はあるはず、こっちの仕事に乗りゃあいいが、さておぬしはどうも小胆者だ。どっちにしろ、昼のまに、気どられるなよ」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)