頸飾くびかざ)” の例文
そして仏蘭西フランスから輸入されたと思われる精巧な頸飾くびかざりを、美しい金象眼きんぞうがんのしてある青銅の箱から取出して、クララの頸に巻こうとした。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
みんな円い赤ぐろい顔をして、女は頭髪かみにへんな棒をさし、大きな金いろの耳輪を鳴らし、石ころをつないだような頸飾くびかざりをしていた。
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
孔雀くじゃくの羽根の扇を持って、頸飾くびかざりだの腕環うでわだのをギラギラさせて、西洋人だのいろんな男に囲まれながら、盛んにはしゃいでいるんだそうです
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
選釈にもすでに解説が試みられ、三・四行の始めの語は美麗びれいを意味する形容詞、テウタマは頸飾くびかざりのたまのことらしいが、是に対するテウツシヤは不明だとある。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
老先生は聴診器をだらしなく頸飾くびかざりみたいに肩にひっかけたまま、お座敷の廊下の籐椅子とういすに腰をかけ
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
醤は、サロン一つの赤裸あかはだかであった。くびのところに、からからんと鳴るものがあった。それはこの土地に今大流行の、けだものきばを集め、穴を明けて、純綿じゅんめんひもを通した頸飾くびかざりであった。
耳輪や頸飾くびかざりや扇や手提袋や
忘春詩集:02 忘春詩集 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
里から私にき添って来たばあやのおせきさんと相談して、私の腕輪や、頸飾くびかざりや、ドレスを売った。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
肉づきのいいうなじにはにじのようにギラギラ光る水晶の頸飾くびかざりをして、眼深まぶかに被った黒天鵞絨びろうどの帽子の下には、一種神秘な感じがするほど恐ろしく白い鼻の尖端せんたんあごの先が見え
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
後に東北のイタコの数珠や、アイヌの頸飾くびかざりなどを見るようになって、ジュズとは呼びながらも我々の真似ていたのは、もっと古風こふうな、また国風なものだったことに心づいたことである。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
腕輪、頸飾くびかざり、ドレス、帯、ひとつひとつ私のからだの周囲から消えて無くなって行くに従って、私のからだの乙女の匂いも次第に淡くうすれて行ったのでしょう。まずしい、中年の女。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)