頭領かしら)” の例文
「だまれ。いつ頭領かしらから籠城の用意をしろとおふれがでた。しかも、夜が明けしだいに、裾野すそのへ討ってでるしたくのさいちゅうだわ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「その通りだよ。菊次郎が頭領かしらになって、この十年の間に、磯屋の身代を滅茶滅茶にし、その半分ぐらいは自分達が取込んでいるんだ」
頭領かしらの命令は義よりも堅い。たとえ妹であろうとも、白糸の合図があった以上、殺さなければならないのである。
赤格子九郎右衛門の娘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかもその下から大刀のさやと小刀の小尻こじりとが見えていた様子といい、一壇高き切株へどッかと腰を打ち掛けて、屋台店のかに跋扈ふみはだかッていた為体ていたらくといい、いかさまこの中の頭領かしらと見えた。
初恋 (新字新仮名) / 矢崎嵯峨の舎(著)
「その通りだよ。菊次郎が頭領かしらになつて、この十年の間に、磯屋の身代を滅茶々々にし、その半分位は自分達が取込んで居たんだ」
頭領かしら、そう落胆がっかりするにもあたりませんぜ。こんな時にゃいつでも用の弁じる金箱かねばこを頭領は持っているはずじゃありませんか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「召捕りましたる海賊の口よりしかと聞きましたる所によれば、その女子こそ海賊船の頭領かしらとのことにござります」
赤格子九郎右衛門の娘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ほかじゃありませんが、いつか、六条の遊女町に火事のあった晩、頭領かしらが目をつけてうまく手に入れかかった堂上の姫君があったでしょう」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
吉三郎は仲間では三下さんしただが、あの牙彫の手形を手前のところから見付けて持つて行くと、急に頭領かしらの株を狙つて、拔荷の大儲おほまうけを一人占めにしようといふ大望を起したのさ
「……知らぬこととは云いながら兄妹契りを結ぶとは取りも直さず畜生道。二人ながら活きては居られず、かつは頭領かしら命令いいつけもあり、今宵忍んで妹めを打ち果たしましてござります。……」
赤格子九郎右衛門の娘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
頭領かしらの四郎でさえ手を下し得ない惨虐さんぎゃくをこの男は平気でやる、また、どんな、警固かためのきびしいやかたでもこの小男は忍び込むのに困難を知らなかった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの牙彫げぼりの根付は、たぶん抜荷を受取る手形のようなものだろう。吉三郎は仲間では三下だが、あの牙彫の手形を手前のところから見付けて持って行くと、急に頭領かしらの株を狙って、抜荷の大儲けを
領主の力でも抜くことの出来ない地盤と勢力を、牢固ろうことして持っている野武士の頭領かしらとは、考えられない姿であった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おお、海賊かいぞくの腕が強いか、山賊の智恵ちえがたしかか、ここでいちばん腕くらべをしてもいい。それともすなおに頭領かしら龍巻たつまきをよんできてびをするか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なあ、龍巻。てめえとおれとは、その昔、天下を二分するような元気で別れたんだが、おたがいに、いつまでケチなぞく頭領かしらじゃしようがないなあ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こいつらあ今日埴生で、一族の者を二人まで手にかけやがったので、頭領かしらがおそろしくご立腹なすって生捕って来いと云うんで、ふん縛ってきたところでごぜえます」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おのれ云わしておけば好きな囈言たわごと、さあ、俺等の一族に指でも指した奴は、なぶり殺しにするのが雨龍一族のおきてだ。引ッからめて頭領かしらのところへ吊して行くから観念しろよ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さもこそ——と、家人は頭領かしらのことばにうなずいて、一蹴いっしゅうすべく意気ごんで駈け戻って行った。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「恥かしくねえのか。義賊だの、五人男のと、世間でいわれている頭領かしらが。——血まですすり合った四人の乾分こぶんが、獄門に、首ッ玉あ並べているに、うぬあ、気まりが悪くねえのかッ」
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あわれむべし、あなたもやはり無智な野武士の頭領かしらに過ぎなかったか」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ねえお頭領かしらえ、私にとってはそうした恩のある方なんです。事の間違いで手下の一人や二人傷つけたかあ知りませんが、何も居候の侍なんかになぶり殺しにさせなくったって、いいじゃあありませんか」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あ。お頭領かしら……」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「野武士の頭領かしら
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)