青大将あおだいしょう)” の例文
旧字:青大將
青大将あおだいしょうが真二つにちぎられてのたうちまわるのだ。尺取虫しゃくとりむしと芋虫とみみずの断末魔だんまつまだ。無限の快楽に、或は無限の痛苦にもがくけだものだ。
火星の運河 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「よし!」と八戒は眼を閉じ、いんを結んだ。八戒の姿が消え、五尺ばかりの青大将あおだいしょうが現われた。そばで見ていたおれは思わず吹出してしまった。
蜜蜂は二度って二度逃げられ、今は空箱だけ残って居る。天井てんじょうの鼠、物置の青大将あおだいしょう、其他無断同居のものも多いが、此等これら眷族けんぞくの外である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
正直な彼は主人の疳違かんちがいを腹の中でおこった。けれども怒る前にまず冷たい青大将あおだいしょうでも握らせられたような不気味さを覚えた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
先刻さっきの、あの青大将あおだいしょうの事なんでしょう。それにしても、よく私だというのが分りましたね、驚きました。」
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それをまたねらって青大将あおだいしょうというへびがそとから入ってくるのだが、この蛇は屋通やどおしという別名もあるくらいで、しばしば屋根の萱や藁のわずかなすき間から出入りして
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「へびの芸当だ」とかれはいった、そうしてポケットから青大将あおだいしょうをだした。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
裏の物置に大きな青大将あおだいしょうが居る。吉さんは、其れを先々代の家主のかみさんのれいだと云う。兎に角、聞く処によれば、これまで吉さんの言が的中てきちゅうした例は少なくない。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
例えば大きな青大将あおだいしょうか何かがいるのではあるまいかと、三郎はにわかに気味が悪くなって来ましたが、そのまま逃げ出すのも残念なものですから、なおも手で押し試みて見ますと、ズッシリと
屋根裏の散歩者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それから小供のちゃんちゃんを二枚、主人のめりやす股引ももひきの中へ押し込むと、股のあたりが丸くふくれて青大将あおだいしょうかえるを飲んだような——あるいは青大将の臨月りんげつと云う方がよく形容し得るかも知れん。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「はあ、青大将あおだいしょうかね。」
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ある時彼が縁に背向そむけて読書して居ると、うしろどうと物が落ちた。彼はふりかえって大きな青大将あおだいしょうを見た。きっぱなしの屋根裏の竹にからんでからを脱ぐ拍子に滑り落ちたのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「だいじょうぶだよ。毒へびじゃないよ。みんな青大将あおだいしょうだよ」
怪人と少年探偵 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
何だか柔かい青大将あおだいしょう身体からだからまれるような心持もした。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)