雲行くもゆき)” の例文
なにかくさう、唯今たゞいま雲行くもゆきに、雷鳴らいめいをともなひはしなからうかと、氣遣きづかつたところだから、土地とち天氣豫報てんきよはうの、かぜはれ、に感謝かんしやへうしたのであつた。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さあ、何ともいえないが、とにかく穏かならぬ雲行くもゆきだ。それにこれからは、昔の戦争のように、前以まえもっいくさを始めますぞという宣戦布告なんかありゃしないよ。
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大石鶴松は、くすぐったそうな顔つきで、夫婦間の雲行くもゆきを偵察するように、金五郎とマンの顔を見くらべた。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
言捨いひすてて忙しげに走り行く。瀧口、あツとばかりに呆れて、さそくの考も出でず、鬼の如き兩眼より涙をはら/\と流し、恨めしげに伏見ふしみの方を打ち見やれば、明けゆく空に雲行くもゆきのみ早し。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
頬杖ほおづえついて、廂越しに、暫く雲行くもゆきでも観測しているように、呟いた。
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「時に吉田氏、その後の雲行くもゆきは、いよいよ穏かでないぞ」
水の田に薄氷うすひただよふ春さきはひえびえとよし映る雲行くもゆき
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
雲行くもゆきは、はじめっから険悪だったが、応接室へ入ると同時にいっそう険悪さを加えた。
四次元漂流 (新字新仮名) / 海野十三(著)
水の田に薄氷うすひただよふ春さきはひえびえとよし映る雲行くもゆき
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)